第12部 不公平な取り決め |
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ODNエコノミー2を利用すれば、日本テレコムの奈良POIからNTTのディジタルアクセス64を引いて、毎月のランニングコストが4万2000円。OCNエコノミーの月3万8000円と比べれば若干高くなるが、なんとか個人でも利用できる値段である。ようやくインターネット常時接続の見通しが立ち、ODNエコノミー2を申し込むため、1998年6月3日、日本テレコムの関西支社にODNエコノミー2を申し込みたい旨を伝えた。折り返し、担当から電話をくれるという。
しばらくして、日本テレコムの東海支社から電話があった。奈良POIを利用するので関西支社の方に電話をしたのに、なぜ東海支社が対応するのか不思議に思ったが、私の住む三重県の上野MA(単位料金区域)からの接続は、同じ三重県の津POIになるという。上野から津までは35kmでディジタルアクセス64を利用できる30kmを越えているので、高価なHSD専用線になってしまう。上野MAから一番近いPOIは奈良POIで30kmなので、ディジタルアクセス64で奈良へ接続したいと申し出ると、それはできないという。
担当者の話では、「NTTにはZC(ゾーンセンター)という考え方があり、主に県単位で設定されている。事業者間の相互接続の取り決めで、このZCを越えての接続はできない。日本テレコムとしては、このような制約なしに接続サービスを提供したいが、NTTとの取り決めなので仕方がない。」という。いったい、どういうことなのか。
上野MAから各アクセスポイントまでの距離 |
6月4日、県境を越えた相互接続は本当にできないものなのか、もう一方の当事者であるNTTの専用線担当に、電話で問い合わせた。すると、「よく分からない。後日連絡する。」という。私はNTTの専用線担当部門に問い合わせをしているのであって、専用線の担当外の社員に聞いているのではない。それなのに、県境を越えた相互接続の問題を知らないとは、NTTがこの問題をいかに認識していないかの証拠である。翌6月5日、NTTの相互接続の担当部門から回答の電話があった。それによると、「NTTと日本テレコムは、相互接続の対象範囲などを記した協定書を郵政省に届け出て認可を受けている。日本テレコムがNTTに協定の変更を申し出れば、変更が可能であり、サービスが提供できるようになる。」という。
相互接続の協定を、そんなに簡単に変更してもらえるものなのだろうか。今度は日本テレコムの関西支社に電話をして、協定の変更が可能なのかどうか問い合わせてみた。しかし、「協定は郵政省の認可を受けているものであるので、制度上変更することはできない。これまでも、県境を越えての相互接続をしたいという話があったが、県境を越えての相互接続が実現された前例は一件もない。ディジタルアクセスはNTTのサービスなので、NTTとの協定がある以上、県境を越えての接続はできない。津POIでの接続であればサービスできる。」との返事であった。期待はしていなかったが、絶望的な回答である。
県境を越えて相互接続ができないという、NTTと日本テレコムの協定は、利用者を無視した不利な協定ではないのか。6月5日、郵政省近畿電気通信監理局のテレコム相談センターに、県境を越えての相互接続ができないと問題について相談してみた。担当者からの返事は、「初めて聞いた話なので、調べて、週明けに電話する。」とのこと。電気通信監理局でも、この問題について何も知らないようである。
翌週、近畿電気通信監理局から電話があった。それによると、「NTTと日本テレコムなどの新電電各社との間で、約款に基づき協定が交わされていて、県境を越えての相互接続はできないことになっている。見た目の距離は短くても、実際は回線を迂回しているのではないか。例えば、上野と奈良であれば、計算上の距離は30キロであっても、実際の回線は上野から一旦津に入り、そこから名古屋などを経由して奈良に行っているなど、距離が長くなってしまうのではないか。だから、県境を越えての相互接続はしないことになっているのではないか。」との回答であった。私が「利用者に不便な協定なので、改善するように郵政省から指導して欲しい。情報格差を是正するのが、電気通信監理局の仕事ではないのか。」と言っても、「NTTと日本テレコムの間の協定なので、郵政省は口出しできない。」との、全く期待はずれの返事であった。
しかし、県境を越えての相互接続はできないという協定は、どう考えても納得できない。それだと、私の住む三重県上野MAの地域からは、ディジタルアクセスを利用しての相互接続サービスは、上野に接続地点ができない限り、永久に受けられないことになる。
上野から三重県内の他の地域までの距離は、すべて30キロを超えていて、一番近い亀山でも32キロ、日本テレコムのPOIがある津までは35キロもある。これではディジタルアクセスを利用することができず、高価なHSD専用線以外に選択肢がない。一方、滋賀県の水口までは23キロ、奈良県の奈良までは30キロで、ディジタルアクセスを利用できる距離ではあるが、県境を越えての相互接続はしないという協定のおかげで、いくら距離が短くてもこれらのアクセスポイントには接続できないのである。
上野から津までの距離は35キロであるので、ディジタルアクセスを利用することができず、専用線料金が大きく違ってくる。30キロ以内であれば、ディジタルアクセス64を利用して、月額2万7000円で相互接続の回線を利用することができる。しかし、30キロを超えると、高価なHSD専用線のみとなり、40キロまで月額6万8000円と一挙に料金が2.5倍に跳ね上がり、これではもう個人の手の届くところではない。
結局、ODNエコノミー2とディジタルアクセス64を利用したインターネットの常時接続は、あきらめる以外にない。県境を越えての相互接続ができないのであれば、隣接区域間であれば専用線の距離を30キロとするなど、利用者の不利にならないようにするべきではないだろうか。でなければ、県境を越えて相互接続をしないと言う協定を今すぐ改善すべきである。
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